9月27日に行った一般質問の要旨です。
1 新型コロナウイルス感染症に関する差別等について
(質問要旨)
新型コロナウイルス感染症に感染し、社会復帰をしようとするとき、行政機関や準公的病院において、担当者の認識不足から、感染症における差別とも捉えられかねない対応や言動を受ける経験をした。
行政機関や医療機関において、差別的な対応が取られるということはあってはならない。差別防止のためには、職員の感染症に対する正しい理解が重要であり、そのための啓発を徹底する必要がある。
また、新型コロナウイルス感染症が完治したにも関わらず、感染症に対する正しい理解を周囲が持っていないと、職場復帰等で差別等が発生し、感染した人の生活に大きな影響を与える可能性がある。
そこで、本県の職員に対して、新型コロナウイルス感染症への正しい理解を促進する取組を行っているか、所見を伺いたい。また、感染症への差別に対して、県民に対してどのような啓発活動を行っているか、所見を伺いたい。
(知事答弁)
新型コロナウイルス感染症に関する差別等についてお尋ねがありました。新型コロナウイルス感染症の感染者や医療従事者等に対する差別や偏見は、決してあってはなりません。差別等を生じさせないために、新型コロナウイルスに対する正しい知識を普及啓発することは大変重要です。
まず、職員に対する正しい理解の促進についてです。県では、新型コロナ専用ポータルサイトを設け、正しい感染防止対策や、季節や変異株の状況に応じた最新の情報を掲載して、新型コロナウイルスに関する職員の理解を促進しています。また、新型コロナウイルス感染症に関する差別に対する職員の意識を高めるため、全ての所属の管理監督者を対象とした人権研修を実施しました。この研修では、患者やその家族、医療従事者等に対する差別問題などを取り上げ、各所属の管理監督者が感染症に対する正しい知識を身につけ、業務上差別と取られかねない対応をすることがないよう徹底しています。
次に、県民に対する啓発活動についてです。本県では、クルーズ船の対応に始まって、全国で最も早い時期から、医療従事者や患者等に対する、心ない扱いや偏見などの問題が生じました。そこで、新型コロナにり患した方であっても感染後、一定期間が経過すれば、感染力がなくなることなどをホームページなどで、繰り返し周知してきました。また、今年1月には、企業や市町村等とも連携し、「コロナ禍における人権」をテーマに「人権メッセージ展」をオンラインで開催するなど、県民の皆様に対する啓発活動を続けています。加えて、医療従事者等、新型コロナに対応されているエッセンシャルワーカーへの差別や偏見に対し、私自身が、こうしたことは、決して許されないものだと、メッセージを発信してきました。
今後も、こうした取組により、コロナ禍における差別や偏見のない社会の実現を目指してまいります。
(再質問)
今回、新型コロナウイルス感染症を取り上げたのは、おそらくこの104人の中で唯一感染してしまったため、感染をして気づいたことがある。再質問もしたいのだが、その前に3点、話をしたい。まず1点目に、「感染者は悪くない。」と皆さんおっしゃるが、実際に感染すると、感染者は自分が悪いと思ってしまう。理由は単純であり、家族、濃厚接触者、あるいは仕事の関係で、申し訳ないと謝ることが非常に多く、段々と自分が申し訳ない気持ちになっていく。実際、私は感染した翌日が月曜日だったのだが、その日自分が何をしていたかというと、ずっと、チャットツールや電話で「申し訳ない。」と言い続けていた。実際に、ある大学の有志の教員が、実際に軽度で感染した500人程度にアンケートを取って分析した結果として、入所までに不安なことや辛かったことがあると回答した方は87%、そのうち5割以上の方が、誰かに感染させたかもしれないこと、家族や身近な人が濃厚接触者になったことに申し訳ない思いを持ったと答えていた。そう意味では、統計的に見ても「感染者は悪くない。」と言うけれども、実際には自分を責めてしまう人がいらっしゃるという前提条件がある。
そして、2点目であるが、周囲の対応が2つに分かれるということがある。1つは、感染した人のことを考え、その人本位で対応してくれる人や組織、もう一つは逆に、言葉上はそのように言うが、組織を優先してしまい感染した方への対応が良くない組織である。当然、後者が例外的で少ないのだが、気持ちが参っているときに、そういった対応を取られると、なかなか落ちていってしまうというところがある。実際私も助けられたのは、家族や同僚の優しい言葉であった。議会局の職員の対応も凄く素晴らしく、初めての体験であったにもかかわらず、しっかりと私のことを考えて対応してくださった。議会に戻った時にも、同僚議員の皆様にも気持ちのある言葉をかけてもらったのは今でもありがたく思っている。実際に、先ほどのアンケートにも書いてあったが、何に救われたかと言うと、そういった言葉であり、さらに言えば冗談で笑い飛ばしてくれるのが、一番助かる部分があったりする。一方で、組織の都合で感染者に負荷をかけてしまったり、エビデンスに基づかない対応、無意識に差別的な扱いをしてしまうことは私自身も実際に経験した。
3点目として、それらも踏まえて、一歩間違えると大きな実害を生むと感じて質問に取り上げた部分がある。万が一対応というが、コロナはいくつかの条件を満たすと、10日間で社会復帰ができるが、世の中の理解が追い付いていないために、万が一と仕事復帰を抑えられてしまう。仕事が復帰によって影響されるような人たちは、収入が断たれてしまうと思った。最悪の場合は、自分の命を断ってしまう可能性もある。実際、1月22日にNHKのニュースで出ていたが、新型コロナウイルスに感染した後で、自宅療養していた東京都内の30代の女性が自殺をしていた。この理由として、残されたメモに、自分のせいで迷惑をかけてしまったとあり、そんなことは絶対にないのだが、実際に、例外的かもしれないが命を絶たれる方もいる。そういった事態に対して、当然精神科の人たちは心理的なケアをしてくださいと言うが、私は、それも大切だがその前段として、そういった負担をかけてしまうような社会情勢、雰囲気が問題かと思う。なぜそうなるのかと考えると、自分自身がかかって感じたのは、これは人権問題なんだという意識が希薄なのではないか。先ほど紹介した法務大臣や首長は、そこを深刻にとらえているから、自分たちの言葉で、動画等によって発信をしているのかなと感じた。先ほどの知事の答弁の中でも、エッセンシャルワーカーの方々への応援もそうだし、差別をすべきでないということを発信しているのは重々承知しているし、大切なことだと思っている。一方で、感染者がこれだけ増えた時期もあって、一般の人に対する差別と言った問題もしっかりと知事の言葉で発信をしていく必要があると思う。
そこで、提案も含めて再質問だが、新型コロナウイルスの感染者への差別は人権問題であるという視点からも知事自らの言葉として、本県として差別は許さないといったことを動画やホームページ上に発信していくべきと考えるが、知事の所見を伺う。
(知事答弁)
感染された実感に基づく、様々なお言葉を重く受け止めたいと思います。私自身も、こういった問題に、いち早く察知したという自負があります。コロナの対応が始まったころに、県内の300を超える病院に毎日電話をかけて、今どういうことが起きているかを全て把握したところから始まりました。その時に、医療関係者が現場で差別的な言葉を受けているということがありました。これはいけないということで、いち早く、こういったことは、とにかく言わなければいけないということで、おそらく、その視点でものを発したのは私が最初だと思います。
しかし振り返ってみて、正直、失敗をした経験だったと思っています。それは、皆で盛り上げていこうという中に、がんばれコロナファイターズと言うメッセージを最初出したわけですが、初めに出したときにはテレビの専門家の皆さんやドクターの皆さんも「こういったことを言ってくれるのはありがたい。」と言うコメントが続いたのですが、ある日突然ネットでの反応が変わり、ふざけるなという話になり、大変なバッシングを受けました。メッセージを出すというのは、大変難しいことでもあると痛感した次第です。しかし、そういった差別偏見はいけないと、繰り返し述べたことは間違いないわけであり、先ほどお話しくださった視点でのメッセージの発信についてもしっかり検討していきたいと思います。
(要望)
メッセージの発信は非常に難しいところもあるということで、失敗した経験に基づく話は、非常に実感があった。この話は難しいものではなく、人権問題として県民に対してどう取り組んでいくのかというものであり、奇をてらったものではないので、検討という言葉ではあったが、知事の言葉で、しっかりと言っていただければと思う。そして、この場で感謝を申し上げたいのは、昨年厚生の委員会でもいろいろ議論したが、保健所の皆さんである。本当に素晴らしい仕事をしていて、感謝で頭が下がる思いである。一方で、これだけの業務をやっていて追い付かないだろうなと言うのも実感としてあった。やはりコロナが落ち着いている時期に、現場の体制整備をしっかりと行っていただきたいと思っている。