神奈川県議会

2022年7月21日本会議討論

2022年7月21日、会派を代表して、本会議で賛成討論に立ちました。
討論の様子は、神奈川県議会インターネット議会中継でご覧になれます。

以下、討論の概要です。

かながわ県民・民主フォーラム神奈川県議会議員団を代表し、本定例会に提案された定県第43号議案 令和4年度神奈川県一般会計補正予算(第1号)案ほか諸議案に対し、所管常任委員会における審議並びに審査結果を踏まえ、討論を行います。

(1)令和4年度神奈川県一般会計補正予算(第1号)案について

最初に、令和4年度神奈川県一般会計補正予算(第1号)案についてです。

今回の補正予算は、国の「コロナ禍における『原油価格・物価高騰等総合緊急対策』」に対応し、県民生活や県内経済への影響を緩和するための対策を講じるとともに、コロナ対策など当初予算編成後の状況の変化により早急に補正を要するものについて、補正予算が措置されています。

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による生活困窮者への支援や中小企業・小規模事業者等への支援、とりわけ新たな農林畜産漁業者への支援は、物価高、原油高に苦しむ一次産業者を支えるものであり評価します。この臨時交付金は市町村にも交付されますので、有効活用を図って頂くよう求めます。

(2)新型コロナウィルス感染症について

次に、新型コロナウィルス感染症についてです。

現在、感染者数が再拡大している新型コロナウイルス感染症についてですが、今後、新たなパンデミックが発生した場合にも、県民の皆様が安心して生活できるよう、県対策本部の体制や各種取組への対応など、今までの貴重な経験を生かして、取り組んでいく必要があると考えます。

県では全国知事会を通じて変異株の特性や感染状況に対応した実効性のある措置の立案を国に要請していますが、対処方針の見直しなどに注視し、今後も発生した際には事前準備も踏まえ、万全を期して取り組んで頂くことを求めます。併せて対策を働きかけるだけでなく、部局横断の取り組みとなるよう求めます。

なお、本県では過去最多の感染者が確認されていますが、発熱外来に問い合わせをしても、医療機関より断られたという声が私たちの元にも多く寄せられています。今後、発熱外来に対応できる医療機関の拡充と、今後想定される病床逼迫への事前の対応に取り組むことを強く求めます。

(3)観光事業者の支援について

続いて、観光事業者の支援についてです。

令和3年12月に実施した「かながわ県民割」では、県内限定で県内旅行割引を2回行い横浜・鎌倉・箱根を定番エリア、その他の地域を再発見エリアと位置付け、地域によって割引率の差をつけていました。こうした取組は、特に再発見エリア内の観光事業者にとっては、受入環境整備等の投資を行うよいきっかけとなっており、事業者支援の側面もあったものと評価しています。

しかし、今後予定している「全国を対象とした観光需要喚起策」では、県の裁量で地域によって割引率を変えることができません。裾野の広い観光産業において、多くの事業者に支援が行き届くように十分配慮することを求めます。

また、令和4年度の観光事業者向けの既存の補助事業では、補助金を拡充しています。

多くの事業者に有意義に活用してもらうためにも、丁寧な周知徹底を求めます。

(4)第2期行政改革大綱令和3年度点検報告書(案)について

続いて、第2期行政改革大綱令和3年度点検報告書(案)、働き方改革の推進において「月 100 時間以上の職員ゼロ」が目標とされています。しかし、月100時間以上の時間外勤務の職員が、令和3年度の実績値では127名となっています。デルタ株・オミクロン株対応等の緊急的な業務の発生があったことは理解しますが、過労死ラインの目安とされる時間外労働時間80時間を大きく超える、100時間勤務を実施する職員が100名以上いることは深刻な問題です。あらゆる手段を講じて、目標値のゼロを目指すことを強く求めます。

(5)教師不足の実態と解消について

続いて、教師不足の実態と解消についてです。

長時間勤務や子どもの学びの低下などにつながる教師の不足については、詳細な実態の把握が重要です。現場の実態に真摯に耳を傾けてください。例えば、年度の後半にかけて代替の臨時的任用教員の配置が困難になることや、特定の教科の教師がいないことで生じる他の教師の負担増等、連鎖的に起きる負担の構造に着目し、計画的な配置を含め対策に努めて頂くよう求めます。

また、育児参加休暇の取得の現状について、教員不足の影響で、出産・育児及び介護と、仕事との両立を応援しづらい雰囲気が職場に醸成されます。こうした点は、働き方改革や複雑化する社会情勢なども踏まえながら、待遇改善や予算措置など必要な国への要望・提言、制度改善を行って頂くとともに、教育委員会としても教師不足が可能な限り生じないよう計画的な採用を求めます。

(6)児童虐待の取り組みについて

次に、児童虐待の取り組みについてです。

児童虐待は、子供の基本的人権を侵害する行為であり、児童虐待防止法において、禁止されています。児童虐待は、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待に分類されますが、虐待から子どもを守るためには、児童相談所を中心に関係機関が危機感を持って連携・対応していくことが最も重要です。

そこで、県警察にあっては児童相談所と緊密に連携し、児童虐待事案への対応に万全を期していただき、子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを求めます。

(7)(仮称)神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例素案について

最後に、(仮称)神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例素案についてです。

同条例素案については、県の津久井やまゆり園における痛ましい事件が大きな契機であったことについては理解をします。

一方で、同事件を受けて県・県議会の協働の下策定された「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念を考慮すると、その内容が本理念を体現しているとは言いつらい部分もあると考えます。

まず、「当事者目線の障害福祉」とありますが、本県は元々国の制度をけん引するほど、福祉の取り組みを熱心に推進する「福祉先進県」として知られており、それが年を経るごとに弱くなってきた経緯があり、その点に関する懸念は同事件の前から地域福祉に熱心に取り組む県民や県議会からも多く指摘されてきました。つまり、仮に県が当事者目線の障害福祉の実践が不十分であったと考えるのであれば、それは同事件の有無に関係なく生じていた事態であり、その点について深い考察をすると同時に、改めて、本県の先人が掲げてきた障害福祉に対する高い理念を振り返り、条例にもその思いを引き継ぐべきであると考えます。

また、各種条例の項目は、本条例が制定されるまでもなく当たり前に推進されなければならない項目が大半であり、新規の条例を策定してまで明記する点に違和感があります。また、基本的な計画の策定については、既存の枠組みの中にその理念を反映されればよく、屋上屋を重ねる事務的な作業と業務が増えることで、職員や現場の負担が増えるだけに終わるのではないかと懸念します。さらに、障害福祉に係る人材の確保と育成を掲げるのであれば、人材確保の主要因である人材の待遇と労働環境の改善を明記しなければ、実効性を担保できないのではないかと強く危惧します。

最後に、本条例の名称について、「当事者目線の障害福祉」という知事の宣言の文言を用いるのではなく、県と県議会が真摯に議論し策定し、平成28年以来、県民に対して啓発に熱心に取り組んできた「共に生きる社会かながわ憲章」より、「共に生きる社会かながわ推進条例」のように、「共生」を意識した名称の方がより適切であると考えます。

以上、意見、要望、提案を申し上げ、本定例会に提案された諸議案に関し、所管常任委員会の審査結果報告のとおり、賛成することを表明し、討論を終わります。