9月13日に実施した代表質問の要旨は以下になります。
職員本位の多様な働き方について質疑を行いました。
「勤務間インターバル」制度については、2017年2月の一般質問においても取り上げており、5年ぶりの後追い質疑になります。
「週休3日制」については、週5日、1日8時間労働を基準とした働き方へのアンチテーゼもあり、特に労働者におけるワークライフバランスと業務効率化・生産性向上における重要な論点であると捉えています。
「つながらない権利」については、この間の社会や業務のデジタル化の劇的な進展等を考慮すると、欧州の一部の国々のように、早い段階から問題意識を持って本県でも取り組む必要があると思います。
(1) 「勤務間インターバル」制度について
(質問要旨)
人事院主催の研究会が、本年7月の中間報告書において、「勤務間インターバル確保の方策の検討は特に重要である」と記載した。背景には、中央省庁では深夜まで働き翌朝早くから出勤することが日常的との問題意識がある。
本県に目を向けると、働き方改革において「月100時間以上の職員ゼロ」が目標とされているが、令和3年度では、過労死ラインの目安とされる時間外労働時間80時間を大きく超える、100時間勤務を実施する職員が100名以上いることは深刻な問題である。
そこで、本県においても「勤務間インターバル制度」の導入を検討すべきであると考えるが、所見を伺いたい。また、本県では、勤務間に一定の休息時間を確保するために、どのような対策を講じてきたのか、併せて伺いたい。
(知事答弁)
勤務終了から次の勤務開始までの間に必ず一定時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバル」制度は、EU加盟国を中心に導入が進んでおり、労働者の健康を守るために大変重要な取組であると認識しています。
我が国においては、民間企業で努力義務とされていますが、国の令和3年の調査によると、実際に制度を導入している企業は4.6%に留まっています。また、公務部門については、災害時の突発的な業務への対応など検討すべき課題が多く、人事院の研究会では「引き続き丁寧に議論する必要がある」としています。このため、県職員への「勤務間インターバル」制度の導入については、まず国の動向等を注視していく必要があると考えています。
一方、県では、全庁を挙げて働き方改革を推進する中で、職員の勤務間の休息時間をできるだけ確保するため、様々な対策を講じてきました。まずは、長時間労働の是正に向けて、朝夕ミーティングや「ノー残業デー」の定時退庁の徹底、午後9時以降の残業の原則禁止等に取り組んできました。また、始業時間を後ろ倒しできる「時差出勤制度」の運用を大幅に見直し、前日の申請も認めることで、急に遅くまで残業せざるを得なくなった場合でも、例えば、翌日の出勤時間を2時間遅らせて、10時半に出勤することが可能になりました。さらに、テレワークを推進し、通勤時間をなくすことで、負担軽減を図る取組も進めています。
今後とも、勤務間の休息時間の確保に向けて、しっかりと対策を講じることで、職員が健康で生き生きと働き続けられるよう、取り組んでまいります。
(2) 週休3日制について
(質問要旨)
ワークライフバランスの向上、リスキリングの機運醸成、兼業・複業に対するニーズの増加等、様々な観点から、週休3日制の導入は、今後の働き方の標準になっていく必要があるのではないかと考えている。
実際、欧州等のいくつかの国では、週休3日制を試行、導入する国が増えている。
また、2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」では、「多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実」において、選択的週休3日制について企業における導入を促し、普及を図ることを明記している。
そこで、多様な働き方の選択肢の一つとして、職員の週休3日制について検討する意義があると考えるが、所見を伺いたい。
(知事答弁)
地方公務員の勤務時間等は、関係法令により、国や民間企業等の状況を考慮して決定するものとされています。民間企業では、国が令和3年に実施した調査によると、月1回だけ週休3日にしているなど、完全週休2日制より休日の日数が多い企業は、8.5%に留まっています。公務員については、現在、人事院の研究会で、勤務時間制度等に関する検討が行われていますが、週休3日制については、議論がされていません。また、実際に公務部門に週休3日制を導入する場合には、例えば、窓口業務の人員体制への影響など、整理すべき多くの課題があります。こうした点を踏まえると、本県において、現時点で、週休日の日数拡大に向けて具体的な検討をする状況にはないと考えています。
一方、職員のワーク・ライフ・バランスの実現を図る上では、休暇の取得も大変重要です。これまで本県では、月1回「家庭の日」を設定するよう促すなど、年次休暇の取得促進に取り組んでおり、年次休暇の平均取得日数は増加傾向にあります。また、専用ポータルサイトで、育児等に関する休暇制度を周知しているほか、県独自の対応として、介護に関する休暇等の取得可能日数を拡大するなど、子育てや介護に取り組む職員が安心して働ける環境づくりも進めています。さらに、全庁をあげてテレワークを推進しており、通勤に充てられていた時間を職員が有効に活用することが可能になっています。
今後とも、週休3日制については、国や民間企業等の動向を注視しつつ、まずは、職員のワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、休暇の取得促進などにしっかりと取り組んでまいります。
(3) 「つながらない権利」について
(質問要旨)
テレワークの標準化等、職員の柔軟な働き方を推進する上で、チャットツールなどの各種デジタルツールを活用することは不可欠となっているが、このようなデジタルツールによって、職員は常に業務にアクセスできる状態に晒され、業務のストレスを受け続ける可能性がある。このような課題意識の下、勤務時間外や休日に仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利、いわゆる「つながらない権利」が世界的に叫ばれるようになっている。日本では、この権利の議論はまだ活発ではないが、業務のデジタル化を推進する本県では、職員における「つながらない権利」を求める潜在的な必要性は高まっていると推察される。
そこで、職員の私生活に配慮しながら柔軟な働き方を実現するために、業務において「つながらない権利」を考慮した対応をする必要があると考えるが、所見を伺いたい。
(知事答弁)
次に、「つながらない権利」についてです。
いわゆる「つながらない権利」は、勤務時間外や休日に、仕事上のメールや電話等への対応を拒否できる権利のことで、主にヨーロッパで、労使協定や雇用契約に明記するよう企業に義務付ける取組が進んでいます。
我が国でも、厚生労働省が、テレワークに関するガイドラインの中で、時間外や休日の指示・報告についてルールを設けることが有効であるとしており、一部の民間企業で導入が始まっています。
一方、公務員については、人事院で具体的な議論が行われておらず、新型コロナウイルス対策や災害対応はもとより、休日の突発的な事案への対応もあるため、現時点ではルール化をして徹底することは難しいと感じています。
本県では、モバイルパソコンやコミュニケーションアプリを導入したほか、時差出勤やテレワークなどの制度改革を通じて、職員の柔軟な働き方を後押ししてきました。
こうした取組を、コロナ禍で一層徹底した結果、今では、重要な庁内会議から職場内の打合せに至るまで、リモートで行うことが当たり前となり、県庁の働き方は大きく変わりました。
しかしながら、こうした環境の変化によって、職員の仕事と私生活の区分があいまいになり、ワーク・ライフ・バランスが崩れることは、出来るだけ避けなければなりません。
そこで、「つながらない権利」への対応として、まずは、「職員は、休日や夜間においては、緊急対応など、やむを得ない場合を除き、むやみに連絡してはならない」ということを全庁共通の認識とするため、働き方に関する庁内会議などの場を通じて周知いたします。
こうした取組と合わせて、引き続きデジタルツールを積極的に活用して働き方改革を推進し、すべての職員が働きやすい環境づくりを進めてまいります。
(全ての項目に対する要望)
各種取組をいろいろされているということ、本当に大切なことだと思います。
ただ一方で、先ほどご指摘させていただいたように、過重労働になっている職員が絶対数出ている事実があるわけであって、この部分は重く受け止めなくてはいけないだろうと思っています。理論的な話ですが、過重労働をなくす方法は何だろうかと、単純に考えてみると、過重労働をできない仕組みを作ればいいというところだと思うのです。なぜそれが実際問題、特に日本において、官民問わず多くの企業でできないのかと思ったときに、人を長時間働かせるという方法において、組織運営ができない組織が多いと思うのです。なんでかというと、これは経営の問題で、まず組織のトップがどういう意思でいるのか、過重労働は絶対許さないのだという意思になれば、経営のマネジメントの方法としては、代替の方法を探すでしょうし、逆に、そこが弱ければ、当然、いまの現状を見て、注視をして、課題を整理してという時間に割いていくという形になると思うのです。なので私は先ほど来、知事の意思であったり、県の仕組みについていろいろとお伺いをしたところです。そのうえで、当然、今の県の現状というのは重々承知をしたうえで、今後、数年先まで含めたときに、意見・提案として、私はまず勤務間インターバル制度については全国の都道府県に先駆けて県として制度化していくべきではないかと思っています。当然難しい、例外規定はあってもよいと思うのですが、しっかり意思として、かたちと仕組みとして示すということが大切ではないかと思っています。
週休3日制についても、そもそも論として1日8時間、みんな集中して週5日働いているのかと問われると、意外とそんなことはないわけであって、実はアイスランドの事例で私が注目しているのは、週5日から4日に働くことを減らして、給料も変えないでやったけれども、生産性が向上したというところがポイントだと思っているのです。ただ当然、日本の組織でそうなるかというのは未知数なので、一回定点で試行実験をしてみるというのがいいのではないかと思っています。
最後、つながらない権利、これは共有していただけるということで、本件における第一歩だとは思うのですが、そういった様子を見ながら今後、ガイドラインだとか、ひとつ仕組みにしていっていただきたいと思っています。
今日取り上げたこの3つの論点で、ともすると日本の労働習慣でいうと、先のことを言っていると思われがちですが、先ほど知事の御答弁にもあった通り、先進国では結構標準的な形になってきているのですね。ただ世界標準の話をしているだけなのです。 先行会派でよく神奈川モデルという話があったのですけれども、私はこういった分野でも神奈川モデルを作っていただけたらいいのではないかと思い、御提案をさせていただきました。
ただ今日のご答弁を聞く限りは、注視をする、人事院の動きとか、注視ってどういうことかわからないですけれども、ずっとじっと見ているのかわからないのですけれども。それでは何も変わらないし、その瞬間人が倒れていたりもするわけですよね。その間も国の方をずっと見ているのかと言われたらそうでないと思
うのです。そういう意味では、知事は突破力があり、発信力もありますから、こういった分野においても、神奈川モデルを作っていただきたいと思います。
職員が自己や家族を犠牲にしてまで行う業務は私はないと思っていますし、県民もそういったことを望んでいないと思っています。127人が過重労働にあるというのは私は深刻な問題だと思うので、もちろん突発的な業務があるということは重々承知したうえでも、やはりこれが0になるということをどう仕組みで担保していくのか、そういう、できる理由を探す議論を今後していけたらと思います。