調査活動

愛知県産業労働部新産業課~『家庭・コミュニティ型』低炭素都市構築実証プロジェクトと愛知県の関わりについて

第1節 調査の概要

 愛知県産業労働部新産業課を訪れ、嶋田和弘次世代エネルギーグループ主査より『家庭・コミュニティ型』低炭素都市構築実証プロジェクトとの関わりについて説明を受けた後、意見交換を行った。

第2節 低炭素社会システム実証推進協議会の概要

低炭素社会システム実証推進協議会は、愛知県豊田市における『家庭・コミュニティ型の低炭素 都市構築実証プロジェクト』を推進する母体として、2010年8月に豊田市と民間企業19社を中心に設立された。最初の20団体は、豊田市、株式会社エナリス、KDDI株式会社、株式会社サークルKサンクス、シャープ株式会社、 中部電力株式会社、株式会社デンソー、株式会社東芝東邦ガス株式会社、トヨタ自動車株式会社、 株式会社豊田自動織機トヨタすまいるライフ株式会社、豊田通商株式会社、トヨタホーム株式会社、 株式会社ドリームインキュベータ名古屋鉄道株式会社、富士通株式会社、三菱重工業株式会社三菱商事株式会社、株式会社ローソンである。

この計画は、「2010年4 月8 日に、愛知県豊田市経済産業省の『次世代エネルギー・社会システム実証地域』として選定されたことを受けて策定を進めてきたもので」である。同プロジェクトの特長は、「生活者を主体として、生活圏・コミュニティ単位でのエネルギー利用の最適化を目指し、近年増加傾向にある家庭(生活者)からの二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた取り組みから着手し、そこからコミュニティ単位で拡げていくとともに、交通システムや生活者のライフスタイルの変革と いった領域への取り組みも進めていくことです。低炭素化を追求した各種の機器・システムを導入し、電力やガスなどの系統と連携を図るとともに、生活者のエネルギー利用状況やライフスタイルを踏まえて、生活者に無理なく行動の変革を提案することにより、生活者の満足度、低炭素化の推進、社会環境・インフラ整備 コストの低減を実現する社会システムの最適解を導くことにチャレンジすることである。

この目的に沿って、同プロジェクトでは、「『家庭内および移動先でのエネルギー利用の最適化』、『通勤・ 通学・外出における低炭素交通システムの構築』を図るとともに、それらを統合した『生活圏全体』でのエネルギーの最適利用を目指し」、「これにより、主要な注力分野である家庭では、20%(スマートハウス※単体では70%以上)、交通セクターにおいては、40%の二酸化炭素(CO2)排出量削減を追求」し、「 さらに、これらの取り組みを通じて、生活者・自治体・企業の3者が共生する地方型低炭素社会システムのモデルケースを模索するとともに、将来、日本国内はもとより海外の都市へ横展開することを視野に、国や 地域、先進国と新興国といった、それぞれ異なる社会環境に応じたシステムの構築に取り組んで」いく。

※以上、一部「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクトの推進協議会を立ち上げプレスリリース」(2010年8月5日)より抜粋

第3節 愛知県の低炭素社会システム実証推進協議会参加の経緯

 このように、豊田市と民間企業の主導で始まった同推進協議会の取り組みであるが、その後参加団体も増え、2011年7月25日現在で27団体が参加するに至っている。愛知県は2011年6月27日に同協議会に参加することを表明した。

 ここで興味深いのは、愛知県が同協議会に参加することの意義とその役割である。同協議会の設立の経緯が示すように、基本的には豊田市と地元企業であるトヨタ関連企業等が中心となって、同協議会は設立された。そして、豊田市を1つのモデル都市にすることで、そのモデルを日本だけではなく世界に発信をしていくことがその目的の1つである。こう考えると、愛知県が同協議会に参加する必要性が問われる。

 愛知県の同協議会の所管課が産業労働部新産業課であることからもわかるように、愛知県は産業振興の視点から同協議会に参加することを決めている。つまり、豊田市で行われているモデルケースを市外に発信をしていく場合の補助者としての役割を担うことが主たる目的である。担当者も愛知県内の中小企業の振興ということをしきりに触れていた。

 愛知県は同協議会のメインプレーヤーではなく、あくまでも補助的な参加であることがポイントである。

第4節 都道府県別ソーラーパネルの設置数

 意見交換の中で、愛知県のソーラーパネルに対する取り組みについても伺った。意外であったのは、愛知県はソーラーパネルの設置台数の絶対数において全国で一番であるということである。昨年末現在で、設置数は約4.8万台であり、神奈川県の3.6万台と比較しても、絶対数だけでなく割合でも高い数値を示している。

 その理由を問うても、特段大きな理由が見あたらなかったのであるが、この点については、原因究明を行っていく必要があると考えられた。また、今夏まで15万台のソーラーパネルを設置すると述べた知事の主張が如何に現実離れしたものであるかも理解できた。

第5節 総括

 同協議会の取り組みの詳細などについては次章で触れるが、この調査で明らかになったことは、このような基礎自治体主導の取り組みついて県の関われる必要性や範囲は非常に少ないということである。また、県が一方的な考え方を押しつけるよりも、現場の創意によって盛り上がる取組の方が、実効性が高いという点である。

 本県ではソーラーパネルの推進を強く主張し、県下全域に押し付けていく姿勢が多少見られるが、エネルギーの地産地消や多様性の観点からは、このような県の取り組み方針はむしろ基礎自治体の取り組みを阻害する可能性があることも否定できない。

 改めて、県が担うべき役割は何かということを問わなければならない。特に、本件では横浜市や他の自治体でも基礎自治体主導の取り組みが活発化してきている。このような創意工夫を阻害しないということが現在の県に求められることである。