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ビールは高級品と言ってピンと来る人はどのくらいいるでしょうか?
多分、多くの人にとってビールは庶民のお酒ではないかと思います。多くの人が飲み屋の最初に生中を注文することからもその事は伺えますし、実際日本で消費されるお酒の6割以上はビールです。
しかし、戦後間もない頃ビールは高級品だったそうです。氷の冷蔵庫で冷やしたビールをありがたく頂くという経験をされた方は年配の方には少なくないと思われます。
●世界一高いビール税
ところで、日本のビールにかかる酒税は世界で最も高い部類に入ります。しかも他のお酒と比較してもその税率は突出して高いのです。世界の酒税を見渡すとたいていアルコール度に比例して税率を決めたりするのですが、日本の場合はそれほどアルコール度数の高くないビールが、アルコール度の高い他のお酒よりも税率が高くなっています。
ビールの税率が高い理由は、「ビールが高級品である」からです。
平成19年に参議院に提出された質問主意書で以下のやり取りがなされています。
問い:ビールは当初高級品であったため高い税率が課せられていたが、政府は今でもビールは高級品との認識を持っているのか明らかにされたい。
答え:我が国においては、ビールを含めて様々なアルコール飲料が販売されてきており、その中で一概にビールが高級品か否か判断することは困難である。
財務書の役人の方々は「ビールが高級品か否か」の判断もつかない。つまり、ビールは依然として高級品であるという立場をとっています(もちろん意図的にですが)。
●発泡酒を生み出した日本の愚かな税制
「ビールと間違える程のうまさ!」
これは、ある発泡酒(第3のビール)の宣伝のうたい文句です。そうみんなビールを飲みたいにも関わらず、「ビールと間違える」飲料を飲まなければならない現状があります。
発泡酒(第3のビール)とは、日本の酒税の仕組みの隙間をつき開発されたビール類似飲料です。もちろん、世界に発泡酒というお酒は存在しません。ビールを飲めばよいからです。
しかし、1990年代半ばビールメーカーはビールに分類されないビール類似飲料の開発に力をいれました。少しでも値段の安いビール類似飲料を作る事で消費者によりそれらを購入してもらおうと考えたからです。
ビールと発泡酒の製造コストには大差はありません。値段の差は税金です。ビールの税金が安ければ発泡酒というお酒は開発される事はなかったでしょう。
ただ、これだけ一生懸命開発された発泡酒も世界ではまったく売り物にはなりません。ビールを飲めばよいからです。つまり、各企業ともグローバルに事業を展開しなければならない時期に、日本の歪な酒税のために国内でしか売り物にならない発泡酒というお酒の開発のために無駄な企業努力をすることになったのです。
なお、その後財務省の想像以上に発泡酒がヒットし、発泡酒の税率も後に引き上げられました。
●酒税の問題点
酒税の問題点は以下です。
・ 徴税趣旨の歪曲
・ 企業努力の疎外
・ 政治の役割低下
まず、徴税趣旨の歪曲については、とりやすいところから税をという発想が問題であると考えます。ビールは高級品ではなく、従ってビールにかかる酒税が高い理由もありません。徴税趣旨を歪めてまでビールに高額の税率を課す事は、やり過ぎです。
次に、企業努力の疎外については、歪んだ税制を作った為に、企業の健全な努力を疎外し、結果的に国家的な不利益を招いています。
最後に、政治の役割低下については、結局官僚の税制に対する恣意的な制度設計や運用を許して来たのは政治かその人達です。なんでも官僚に任せるのではなく、自分達で考え制度を設計するべきです。国民の声を聞けば「ビールが高級品」でないことくらいわかるはずです。
以上、ビールにかかる酒税の問題点を指摘すると同時に、やはり税制はシンプルであるべきという事は改めて強調したいと思います。