福祉を考える

介護・福祉を考えるその2〜認知症と向き合う

介護・福祉を考えるその2〜認知症と向き合う

(なおとしヘラルド130号(2014年1月号)より)

認知症人口は800万人以上(予備軍含む)~高齢者の4人に1人~

厚生労働省研究班の調査によると、2012年時点での認知症患者数は約462万人、軽度認知障害の高齢者数は約400万人いると推計されました。厚労省の従前の推計では約305万人とされていましたから、認知症患者の増加が予測を大きく上回る勢いで急速に進んでいることがうかがえます。

また、世界規模でも認知症患者は増加しており、昨年12月ロンドンで初めてG8諸国による「認知症サミット」が開催されました。

つまり、認知症とは限られた人だけに関わる病気ではなく、国民の大多数がなんらかの形で関係する国民病とも言えます。従って、私達日本人はこの認知症に真正面から向き合っていく必要があります。

認知症とは??

認知症とは、認知機能(脳の働き)が悪くなり、その人の生活に支障が出てしまった状態をさします。その原因としてはアルツハイマー病が半数以上に上りますが、それ以外にも多くの原因があります。なお、ただの「もの忘れ」は認知症ではありません。

認知症と向き合うこと

 昨年、NHKで放映された「NHKスペシャル認知症800万人時代」を観ながら、「お父さんも認知症の予備軍なんだよ。」と私が冗談っぽく言うと父は怪訝(けげん)そうな顔をしました。「まだ俺には関係ない」という感覚があったのでしょう。父は65歳、現代の感覚で言えば高齢者というにはまだ若いのだと思いますが、統計上では65歳の4人に1人は認知症であり、年齢を追うごとにり患率は高くなります。加齢が原因ですから、長生きすればするほど誰にも等しく認知症になる可能性があります。従って、本当は認知症になる前に、なった時のことを家族で話し合っていた方がよいのです。

これは、私自身が介護の現場で働いていて強く感じることです。どんな死に方をしたいか。後見人を立てるのか。どんな介護を受けたいかなど。認知機能がしっかりしている時に、こういった将来の認知症にかかわる自身の課題について、家族を交えて話すことは認知症発症後の介護にかかる家族の負担を減らします。結果的に認知症が発症しなければそれはそれで良かったと笑って済ませればよいだけです。

認知症に対して今できること、将来できること

 世界規模のサミットが開催されることからもわかるように、認知症は現在人類を脅かす地球規模の課題として捉えられています。しかし、人類は数々の困難を克服してきました。認知症に対しても私達ができることは多くあります。

まずは、認知症を理解することです。正確な理解なくして対策も政策もありません。例えば、厚労省が国民の認知症の理解を深めるために推進している認知症サポーター(約400万人が登録)の講習を受ける等してみて下さい。環境整備や介護状況の改善は即効性の高い症状の改善効果をもたらすため、周囲の人間の認知症に対する理解が深まることで、認知症患者の症状を緩和します(現在は薬物より即効性がある)。

次に、自分自身が認知症にかからない為の予防をすることです。認知症の主因であるアルツハイマー病は生活習慣病との関係性が指摘されています。生活習慣を改めることで、そのり患や発症を遅らせることができます(り患から発症まで20年間かかる)。

最後に、認知症の原因となる病気を克服する治療法の開発です。現在、アルツハイマー病の進行を遅らせる薬は存在しますが、発症や進行を阻止する薬は存在しません。しかし、国内外の官民様々な機関や学者・研究者等が協力して根本的な治療法の解決に取り組み始めました。日本はこの開発に主導的かつ献身的な役割を担うべきと考えます。

 私もキャラバンメイトとして認知症サポーターの育成や健康管理を始めました。皆さんもまずは自分達でできることから始めてみたらいかがでしょうか?