富山県富山市にあるNPO法人しおんの家が運営する富山型デイを視察しました。山田和子理事長から説明を伺い、施設内を見学しました。
富山型デイとは、「年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが一緒に身近な地域でデイサービスを受けられる場所」で、平成5年に富山県内の看護師らが中心となって始めた取り組みです。福祉行政の縦割りを超越した取り組みとして全国的に注目されて、共生型施設として広がりを見せています。
共生型施設には様々な組み合わせがあり、しおんの家では高齢者・障害者・児のデイサービス、ショートステイサービス、ホームヘルプサービス、高齢者のグループホームなど、高齢者福祉・障害者福祉・保育等にかかる9つの事業を4つの施設でサービスを提供しています。
今回の視察を通じて、共生型施設の良い点とその背景にある解決しなければならない問題について考察します。
1.やりがいだけでは食べていけない
理事長のお話の中で、私が印象に残っているのは、「やりがいだけでは食べていけない」「介護職の低い賃金の中で今の福祉は成り立っている」という旨の発言です。
福祉に関わる人に散見される、思いややりがいさえあれば他のことは二の次(端的に言えば悪い待遇も仕方なし)という「『やりがい』万能主義または至上主義」に立たずに、しっかりと現在の介護・福祉にかかる問題点を直視している点に安心しました。
共生型施設は、高齢者から子供まで障害の有無にかかわらず対応することが必要なので、職員に求められる対応力や能力はより幅広いものが求められます。また、このような施設に就労する方々はやる気にあふれている傾向が強いと私は感じています。一方で、制度的な課題から賃金が低く抑えられている現状も今回の調査で明らかになりました。ここら辺のミスマッチに問題意識を持ち、解決を図っていこうとすることは、実は制度設計以前の問題として重要だと私は考えます。
特に富山型デイは近年では非常に注目され、国やメディアでも様々に取り上げられて行けば行くほど、この根本的な問題とのギャップに感じるものがあります。
2.NPOならではの枠外サービス
富山型デイサービスのキーワードは、「共生」「地域」「小規模」「多機能」であり、その求められる役割は多岐に渡ります。一方で、富山型デイも国の制度の枠内に位置付けらるようになり、結果的に「枠外サービス」と位置付けられるものが出てきました。
例えば、利用者様のお墓前りのお手伝いをしたり、家の中の雑用的なお手伝いをすることはニーズがありますが、制度の枠内では対応できません。
しかし、理事長は「このような枠外のサービスに対応することこそが、NPO法人にした一つの思い」との考えの下、枠外サービスの提供を行っています。但し、収益性について課題があるともおっしゃっていました。
3.規制緩和の必要性
福祉職の待遇や枠外サービスの問題について考えるとき、まず最初に考えられるのが「お金をつけること」です。確かに、公がお金を出せば、待遇の問題や枠外サービスの経済的な問題は解決します。しかし、予算は有限です。単純な金銭出動を議会で提案しても問題は解決しません。
次に考えられるのが、「規制緩和」です。理事長も説明の中で「人員配置基準を緩和してほしい」等の規制緩和の必要性を訴えていました。私も介護事業所の運営に関わるようになって感じたのは、経営を阻害する規制の多さや事務手続きの煩雑さです。
今回も人員配置基準などの現場の問題意識をいくつか頂きましたが、これらの点は議会でも取り上げていきたいと思います。
最後に、「共生」を目指す富山型デイの取り組みは非常に大切な方向性だと思います。高齢者・子供・障害者といった括りは行政による便宜的なものであり、人としての生活実態に沿ったものではありません。 「人」に注目し、行政の縦割りに挑戦してきた富山型デイの20年以上の取り組みは様々な可能性を私たちに提示し続けてくれています。
そして、現場の創意工夫が生かされ、関わる人がみな幸せに施設を運営していけるような環境を整えていくことが大切であると改めて感じました。
ご対応頂いた山田理事長始め職員のみなさん、ありがとうございました!
千里の道も一歩から
大 和市内訪問施設・活動:10件
神奈川県内訪問施設・活動:8件
神奈川県外訪問施設・活動:5件
●NPO法人しおんの家の紹介HP
http://www.toyamagata.com/sionnoie/
●「とやまの地域共生」(富山県による富山型デイのリーフレット)
http://www.toyama-kyosei.jp/wp-content/uploads/2014/03/toyama_mi_01_32.pdf